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八代亜紀入門・その3〔完〕。 [音楽]

さて皆さん(浜村淳さんっぽく)。
小学生時代の一時期、オレは山形市という、ちょっと都会的な部分もある、愛すべき田舎町に住んでいましたが、実は当時の山形という町、今から思うと公開録画・公開録音のたぐいがやたらと多く、しょっちゅう人気歌手のみなさんがやって来てはその歌声を披露してくれていたのでした。
だからたとえば、いわゆる《花の◯◯トリオ》の森昌子さん・桜田淳子さん・そして山口百恵さんは、3人とも生で見たことがありますし、他にもオレが目にしたアーティストのみなさんの名前を列挙して行ったら、けっこうなインパクトになるだろうとは思うんです、えぇ。
しかし、それにしても、八代亜紀さんはどうだったかな、と思っても、ちょっと思い出せないのですね。
“生八代亜紀”(語感が「生八つ橋」みたいだな……)、果たして幼いオレは、目にしたのでしょうか……?

今回はそんな、なかば幻の存在となっている、テイチク時代の亜紀さんの楽曲のいくつかを取り上げて、ちょっと語ってみたいと思います。
「入門」と称したわりに、ディープな世界になるかもしれませんが、
読者のみなさん、お許しください!

まずは、そう、「愛ひとすじ」(1974年・オリコン10位)。
コレですね。
実数としてヒットしただけでなく、有線大賞グランプリなどの賞も獲得し、紅白でも歌唱しているのですから、文句なしの代表作のひとつ、と呼んで差し支えないわけです。
そんな「愛ひとすじ」が、1990年代に入ったあたりから、テイチク発売のベスト盤やCD-BOXからオミットされるようになり、それは実質的に今日まで、続いているのです。
なんでか?堺すすむさんのように……は、読まなくてもいいです)
それはひとえに、川内康範先生入魂の歌詞、その中の3番の歌い出し「愛ひとすじ 歌詞」でぐぐれば、すぐわかります)、この部分の一節に、テイチクの皆さんが過剰に反応されて、自主規制なさっているという、その一点に尽きるのではないかと、私は考える次第です。
川内先生に、その“ことば”に該当する人々を差別したり卑下したりといった、そういった意図は、まったくなかったものと、私は考えます。
2019年、1000セット限定ということで発売された『オリジナル・スーパーベスト』の中に、ようやく「愛ひとすじ」は収録されましたが、これは「限定盤」ということで今回はどーかひとつ、という感じが、どうしてもしてしまうわけなんですね。
実のところ、「愛ひとすじ」に関して私たちが求めているのは、「普通に売ってるベスト盤で、いつでも聴ける」という、その一点。
それだけなんです。
この「愛ひとすじ」に始まる“愛・三部作”「愛の執念」(1974年・オリコン9位)、少し間隔があいて「愛の條件」(1978年・オリコン21位)と続きますが、実際のところ、最も歌詞がキョーレツなのは「愛の執念」ではないでしょうか。
「俺から逃げられないぜ!」ではなく、「私からは逃げられないわよ、あなた……!」という世界。
でも、テイチク時代の亜紀さんのビジュアルだったら、こんなこと歌われても納得かなぁ……。

さて、「ベスト盤収録はおろか、CD化もされてるかどうかというシングルA面曲」は、他にもございます。
発売順に、

「夢魔のブルース」(1976年・オリコン69位)
「あい逢い横丁」(1976年・オリコン87位)
「はまなすの花が咲いたら」(1982年・チャートインなし)

といったところが、現在のところ、地味な扱いとなっているようです。
オリコンの実績を見ていただいておわかりのように、これらは大きなヒットにはなっていません。
「夢魔のブルース」は、“愛・三部作”の川内康範先生作詞(出た!)。
青江三奈さんの「眠られぬ夜のブルース」ばりの暗黒路線(でも、ちょっと笑っちゃう)が期待できそうです(この曲だけ未聴)。
「あい逢い横丁」は、テレビドラマ『玉ねぎ横丁の花嫁さん』の主題歌だったようで、そういった分野に明るい、「太陽がくれた季節」などで知られるいずみ・たくさんが作曲。亜紀さんの歌唱の方も、サンダルばきのような、ちょっと庶民的な雰囲気をかもし出しているようです。
曲調自体はマイナー(短調)ですが、メジャー(長調)でエンディングを迎えるのも、ちょっとユニーク。
この曲だけ、CD化が確認されています(2017年発売の『激唱 八代亜紀 流行歌 3』に収録)。
そして「はまなすの花が咲いたら」は、実はけっこう重要な1曲でありまして、このシングルを最後に、亜紀さんはテイチクを離れることになったので、そういった意味でも、あまりいい加減に扱わないでいただきたい1曲です。
この曲も、同名のテレビドラマの主題歌で、吉田拓郎さんとのコンビで知られる岡本おさみさんが作詞、ピコという名でも知られる、日本のソフトロックの重要人物・樋口康雄さんが作編曲を手がけており、八代亜紀さんの作品でありながら『ソフトロック・ドライヴィン』に入っていてもおかしくないような、やわらかな手ざわりの、やさしい楽曲に仕上がっています。
テイチクさんには、これから徐々に、このあたりのやや埋もれている楽曲に光を当てることにも、力を入れていただきたいものです。

まぁ、あまり意味のないことを、3回にわたってウダウダと書いて参りましたが、要するに

「買っても、レンタルでも、ストリーミングでもいいから、とにかくテイチク時代の八代亜紀を聴け!」

という、このひとことに尽きますね。
今はそんなでもなくても、いつか心にグッと来る、そんな日が必ず訪れるはずです。


☆「愛ひとすじ」「愛の執念」「愛の條件」をまとめて収録。限定1000セット。お早めに。


☆「あい逢い横丁」を収録。「おんな港町」ほかのヒット曲も、リミックスされているように聴こえますが、果たして……?


☆今回、BGMに使わせていただいたアルバム。近年の亜紀さんのお仕事の中でも魅力的に感じられる、2015年の作品。クレイジーケンバンドの横山剣さん、THE BAWDIES、中村中さんらが楽曲を提供しています。

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