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稀代のヒットメーカー・筒美京平さんがテレサ・テンのために書いた4曲。 [音楽]

筒美京平さん。
1960年代・70年代・80年代・90年代・2000年代と、5つの年代にわたってオリコンのヒットチャートで第1位を獲得。
ヒット曲は、いしだあゆみさん「ブルー・ライト・ヨコハマ」から小沢健二さん「強い気持ち・強い愛」まで多岐にわたり、レコード大賞は尾崎紀世彦さん「また逢う日まで」とジュディ・オングさん「魅せられて」で2度受賞。
特に1971年前後の活躍はすさまじく、「また逢う日まで」、平山三紀(現・みき)さんの「真夏の出来事」、そして堺正章さんの「さらば恋人」の3曲が、ほぼ同時期に大ヒットしています。
もちろん、今も毎週日曜の夕方、日本中のテレビから流れてくる『サザエさん』のオープニング・エンディング(1969年の作品)も、忘れるわけにはいきません。
そんなスーパー作曲家・筒美京平さんが、テレサ・テン(愛をこめて、敬称略)に提供した楽曲は、現時点で4曲、確認されています。
「京都の恋」の渚ゆう子さん、テレサと同じ台湾出身、「雨の御堂筋」の欧陽菲菲(おーやん・ふぃーふぃー)さんといった、一連のいわゆる《ベンチャーズ歌謡》の大ヒット後のフォローの成果が認められたのか、地元・台湾では演歌もポップスも歌いこなしていたテレサの日本デビュー(1974年)にあたっては、この新進気鋭(当時)を通り越して絶頂期を迎えていた筒美京平さんに白羽の矢が当たり、アイドル色の強い、アップテンポなポップス歌謡「今夜かしら明日かしら」、そしてしっとりしたムード歌謡調の「雨にぬれた花」の2曲が日本でのデビュー・シングル用に用意され、最終的には「今夜かしら明日かしら」がテレサの日本デビュー曲、ということになりました。
ちなみに、日本でのテレサのマネージメントは渡辺プロの系列会社が行なうこととなり、広い意味ではテレサも“ナベプロ所属歌手”でした。従って、同様にナベプロのタレントであったドリフターズの番組である『8時だョ!全員集合』『ドリフ大爆笑』、そしてドリフの舞台などに出演する機会も多く、それもただ歌を披露するだけでなく、コントでもよく共演していました(VTRも残っています)。
テレサは、ドリフとの共演をとても楽しみにしていたそうです。

路線変更、そして幻の「もう1曲」

ちょっと話がそれました。
大きな期待と共に売り出された「今夜かしら明日かしら」でしたが、結果としてはオリコンチャートの“右側の下のほう”、すなわち小ヒットに終わってしまい、台湾から迎えたトップ・スターの日本デビューとしては淋しい結果となりました。
ここで路線変更の話し合いが持たれたようで、第2弾シングルとして、それまでほぼ演歌ひとすじで作曲家活動を行なってきた猪俣公章さん(『シルバー仮面』の主題歌「故郷は地球」も猪俣さん作曲)に「ポップス調で」というオーダーを出した結果(ここがポイント)、仕上がってきた哀愁感たっぷりのムード歌謡「空港」が発売されこれがスマッシュ・ヒット、テレサも日本の芸能界になんとか定着することができたわけです。
ところがしかし、この「空港」が発売される前の段階で、筒美京平さんもテレサのために少なくとももう1曲作り、完成させていました。
それが2012年、レコード会社の倉庫からテープが発見された「ふたたび(再来)」
デビュー曲と同じ、山上路夫さん作詞、筒美京平さん作曲、というところまではわかったものの、タイトルもないまま、ずっと倉庫で眠っていたそうです(というわけで、タイトルは山上さんが新たにつけたとのこと)。
曲調としては、欧陽菲菲さんに京平さんが提供した一連の楽曲から激しさを抜いた感じで、たおやかな優しさ、そして癒しを感じさせるもの。
別れを描いた「空港」とは真逆の歌詞で(「空港」も山上路夫さん作詞)、聴くシチュエーションによっては、思わずポロッと泣けちゃうかもしれません。
シングル第2弾の座は「空港」に譲ってしまいましたが、もしこの「ふたたび(再来)」が世に出ていたら、どうなっていたか。
そんなことを想像しながら「ふたたび(再来)」を聴くのも、楽しいものです。

「大人になったテレサ」と、京平さんとの再会

さて、ここまでで「今夜かしら明日かしら」「雨にぬれた花」「ふたたび(再来)」と、3曲挙げてきましたが、そうですね。1曲、足りない。
その残りの1曲は、一時の日本での活動休止を経て、「つぐない」「愛人」、そして「時の流れに身をまかせ」と、日本でテレサが連続ヒットを飛ばしていた1986年、オリジナル・アルバム『時の流れに身をまかせ』の中に収められたのでした。
タイトルは「愛に疲れて」
作詞と編曲は「つぐない」「愛人」と同じ、荒木とよひささん、川口真さんがそれぞれ担当し、京平さんも「すっかり大人になったテレサ」のために、ポップかつアダルティーで、少し難しい楽曲を提供。
テレサもそれを、難なく歌いこなしています。
アルバム『時の流れに身をまかせ』は、紙ジャケット、アナログなど、さまざまな形で何度も再発されていますので、比較的入手は容易かと思われます。
そして「今夜かしら明日かしら」「雨にぬれた花」「ふたたび(再来)」の3曲は、2枚組のベスト盤『40/40』で、すべて聴くことができます。
※4曲とも、配信もされています。

そういえば、1月29日は、テレサの誕生日なんですね。
亡くなった方の場合、どうしても命日ばかりがクローズアップされがちですが、お誕生日にテレサの歌声を聴いて、その人をしのぶ、というのも、いいんじゃないかな、と思います。
そうそう、中国語のテレサの歌も、すごくいいですよ。
機会があったら、ぜひ。

☆「今夜かしら明日かしら」「雨にぬれた花」「ふたたび(再来)」収録。


☆「今夜かしら明日かしら」の他、「ふたたび(再来)」を初収録したCD。


☆「愛に疲れて」収録。



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