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まったく個人的な、2011年3月11日のこと。その1 [3.11]

その日は金曜日で、テレビの芸能ニュースのトップは、坂上二郎さんの訃報だった。
前日である3月10日に亡くなられた、ということだったので、二郎さん元キャンディーズのスーちゃん(田中好子さん)とは違って、「あの出来事」を知らずに旅立ったことになる。
その日はお休みで、家人とふたりで映画を観に出かけることにしていた。
その後、飼い主のお母さんや“奥さん”を亡くしながらも、ご本犬(?)はいま現在も元気だという青森の名物犬・わさおを“主人公”に据え、飼い主のお母さん役に薬師丸ひろ子さんをキャスティングという、いま思うとかなりチャレンジングな企画である実写映画

『わさお』

である。
観る予定だったのは、午後3時過ぎの回だったので、お昼を過ぎても家でゆっくりしていた。
『徹子の部屋』のゲストは、確かオレがある意味尊敬している高田純次さんだったような気がする。
思えばその頃は、家で「つけてる」といえばテレビだったのだなぁー……。
今はすっかりラジオか、そうでなければ配信動画とかブルーレイとか観てるんですけど。
で、つい先日亡くなって、この頃はまだまだ元気だった愛猫・はなさんに、家の中でのお留守番を頼んで、玄関のカギをかけ、出かけることにした。
『わさお』を観ることになっていたシネコンは、当時の住まいからそこそこの距離、仙台市の長町にある複合商業施設の中にあって、始まるまでちょっと時間があったので、シネコンの下の階の、大きな本屋さんを、家人とふたりでウロウロしていた。
ふと、美空ひばりさんの、若い頃の『平凡』とか『明星』だとかのために撮られたと思われる写真を集めたらしい本が目について、それがなかなかのお値段で、こういうのをなんの躊躇もなく買えるお人は、かなりのお大尽なんだろうなぁ……なんてことを思っていたら、
突然、大きな揺れが来た。
ダジャレではないが、そこら中の棚という棚から、本がわさわさと、いや、ドサドサと落ち、通路をふさいだ。
揺れはどんどん、激しくなってゆく。
こういう時、人ができることといっても限られているし、実際、家人と手をつないで「愛してる」とかお互い言いながら、耐えた。
まるで富島健夫先生の、ジュニア小説(“ジュブナイル”と呼ぶには、ちょっとエッチなやつ)に出てくるカップルのようである。
というか、死ぬかもしれない、いや、死ぬ、と思うような揺れだったので、その心の準備も、していたと思う。

1分か2分が経ち、揺れが収まってきたところで、商業施設の店員の方の指示で、階段から地上へ出ることになった。
もはや、とりあえずその日は『わさお』どころではない。
確か、自転車と地下鉄を使って来ていたので、とりあえず地下鉄の駅まで、ふたりで歩いた。
ところどころでケータイのワンセグでテレビをつけている人がいて、明らかにただ事ではない、ということがわかった。
駅までの道をたどる途中も、被害が大きいようだった。
駅のそば、いまはローソンになっているローソンストア100が、入り口だけ開けて、とりあえずあるモノだけ、という感じで、電卓片手に食料品などを販売していて、うちも少し、買わせてもらった。
駅の駐輪場からうちまで、自転車を押して帰ったのか、乗って帰ったのか、よく覚えていない。
うちに着き、玄関のドアを開けると、まずは“はなさん”を呼んだが、出てこないし、気配もしない。
それ以前に、もともと限りなくゴミ屋敷に近い状態ではあったうちが、寝起きすらできない状態になっていた。
もちろん、ライフラインも、すべて止まっていた。
この、自分たちの身のまわりのこと、そして“はなさん”のことでいっぱいいっぱいで、沿岸部で何が起きていたのか、その時のオレたちには知る由もなかった。(つづく)
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